『良いこと悪いこと』と『20世紀少年』:伏線構造に隠された“過去と現在”の関係

ドラマ

テレビドラマ『良いこと悪いこと』と漫画/映画作品『20世紀少年』(作者:浦沢直樹)には、単なる“昔の事件が今につながる”というテーマを超えて、巧みに張られた伏線構造という共通点があります。

例えば、幼少期の約束や記録、集団の絆と裏切り、そして“時間を超えた謎”――これらが両作でどう映し出されているのかを比較・分析することで、作品をより深く理解するヒントが見えてきます。

本記事では、まず両作における構造的な“過去⇔現在”の関係を整理し、その上で具体的な伏線・演出の類似点を拾い、最後に“なぜこの構造が強く響くのか”というテーマまで掘り下げていきます。

ドラマ『良いこと悪いこと』とは

東京郊外で家業の塗装会社を営む高木将(間宮祥太朗)は、22年前に小学校の校庭へ埋めたタイムカプセルの掘り起こしを同窓会で行う。

そこにはかつて仲良しだった6人が描いた「みんなの夢」の絵と卒業アルバムが収められていたが、なぜかその6人の顔だけが黒く塗りつぶされていた。

その夜、6人の一人である武田敏生(貧ちゃん)が謎の転落死を遂げ、不穏な連続事件が始まる。事件の真相を探る高木と、過去にいじめを受け週刊誌記者となった猿橋園子(新木優子)がタッグを組み、さらに幼馴染の桜井幹太(カンタロー)の居酒屋火災事件や、他の同級生たちの不審死も続く。

昔のいじめや夢、顔を塗りつぶした理由など過去」と「現在の謎が事件と絡み合い、登場人物たちの善悪や贖罪が、少しずつ明らかになっていく。

犯人は誰なのか、6人の過去と事件の動機を巡り、緊迫した心理戦と予想を超える展開が視聴者を惹きつけて離さない。​

主な登場人物

  • 高木将(キング):間宮祥太朗

  • 猿橋園子(どの子):新木優子

  • 武田敏生(貧ちゃん):水川かたまり

  • 桜井幹太(カンタロー):工藤阿須加

  • 中島笑美(ニコちゃん):松井玲奈

  • 羽立太輔(ちょんまげ):森優作

  • 小山隆弘(ターボー):森本慎太郎

    上記以外にも東雲晴香(深川麻衣)、今國一成(戸塚純貴)、土屋ゆき(剛力彩芽)など同級生や関係者多数。​

放送日/視聴方法

  • 日本テレビ系 毎週土曜 21:00~
    (2025年10月11日より放送)

  • 見逃し配信:TVer(1週間限定)、
    Hulu(有料・見放題)でも視聴可能。​

原作の情報

本作は原作のない完全オリジナル脚本であり、小説・漫画などの原作は存在しません。​

他の作品と異なる要素

  • 原作なしのオリジナルで、誰も結末を予想できない展開。

  • 同窓会とタイムカプセルという王道サスペンス要素に加え、13人の容疑者が謎めいた演出で登場し、プロフィール帳のヒントやSNS考察が盛り上がる仕掛けがある。

  • 「善悪」と「いじめ」「贖罪」をリアルかつ重層的に描写しつつ、過去の人間関係が事件の動機に深く結びついているため、考察好きや社会派ドラマファンにも響く内容となっている。

『良いこと悪いこと』と『20世紀少年』に共通する物語構造

ドラマ『良いこと悪いこと』と漫画『20世紀少年』には、物語の根幹を支える「過去と現在の交錯」という構造が共通しています。

どちらの作品も、登場人物の子ども時代に起きた何気ない出来事や約束が、大人になってからの事件や対立の引き金となります。

この「過去の記憶が現実を動かす」という構図は、単なるサスペンスではなく、人間の罪・後悔・成長といった普遍的なテーマを掘り下げる装置として機能しています。

幼少期の同級生/秘密基地/タイムカプセルという設定

『20世紀少年』では、子ども時代の「秘密基地」での遊びが後に“世界を破滅へ導く計画”の原型となり、物語全体の伏線となります。

一方、『良いこと悪いこと』でも、卒業アルバムや同窓会といった「過去の仲間たちの記憶」が事件の核心を握る形で描かれています。

両作ともに、“子ども時代に残した記録”が、時間を超えて登場人物の運命をつなぐモチーフとして強調されています。

大人になってからの再会・事件・謎の発覚という時間軸の転換

どちらの作品にも共通するのは、過去を共にした仲間たちが大人になって再び再会するという展開です。

過去に封印した秘密や裏切りが明かされることで、ストーリーはサスペンスから心理ドラマへと深化していきます。

『良いこと悪いこと』では“再会”が事件の発端となり、『20世紀少年』では“再会”が復讐の引き金として描かれています。

“過去の行動”が“現在の事件”に直結する因果の仕組み

両作に共通する大きな特徴は、子ども時代の些細な行動が、大人になった現在において重大な結果を生むという因果構造です。

この構造は、単なる伏線ではなく、「あのときの選択が今を形づくる」という人生観を象徴しています。

そのため、作品を通して「過去をどう受け止めるか」という哲学的な問いが観客に突きつけられます。

具体的な伏線・演出に見える類似ポイント

両作品において、伏線の張り方や演出手法にも多くの共通点が見られます。特に、記録・裏切り・倫理の曖昧さという3つのテーマが際立っています。

卒業アルバムや手帳、日記など“記録”が鍵として機能する

『良いこと悪いこと』では、登場人物の卒業アルバムが事件の核心を示す「鍵」として機能します。

同様に『20世紀少年』でも、“予言の書”というノートが、子ども時代の空想を現実化させる導火線となっています。

どちらも「書かれたもの=未来を決定づけるもの」として描かれ、記録の重みが強調されています。

グループの中に“裏切り者”や“秘密”が隠れている構造

仲間同士で信じ合っていたはずのグループ内に、実は裏切り者が潜んでいるという構造も共通しています。

『20世紀少年』では“友だち”が、そして『良いこと悪いこと』では同窓生の一人が、物語を揺るがす存在として描かれます。

この「信頼の裏切り」という展開は、人間関係の脆さと、真実を見抜く難しさを象徴しています。

善と悪/善いことと悪いことが曖昧になる倫理的グレーゾーン

両作品とも、明確な“悪役”を描かず、登場人物それぞれに善悪の両面が存在します。

『良いこと悪いこと』では「何が正しいのか」という道徳的な問いが、『20世紀少年』では「正義の裏に潜む暴力」がテーマとなります。

この倫理の曖昧さこそが、視聴者や読者に深い思考を促す要因となっています。

なぜこのような構造が観客・読者に刺さるのか?

両作に共通する伏線構造が多くの人に響くのは、単なるミステリー的興味ではなく、ノスタルジーと喪失感が根底にあるからです。

ノスタルジーと“過去に戻りたい”という感情

秘密基地や同窓会といった要素は、誰もが持つ「懐かしさ」と「戻れない過去」への感情を刺激します。

それゆえに、登場人物が過去の自分と向き合う姿に、視聴者自身の記憶が重なります。

集団の絆と個人の選択:少年期から大人への転換

子ども時代は集団の中で行動していたのに対し、大人になると個人の責任が問われます。

この変化が、『良いこと悪いこと』では「善悪の選択」として、『20世紀少年』では「世界を救う使命」として表現されます。

“予言”“書き込み”された未来という物語装置

『20世紀少年』における“予言の書”や、『良いこと悪いこと』での“アルバムへの書き込み”は、いずれも未来を暗示する仕掛けです。

これらの「書かれた未来」が現実化する瞬間に、物語は最大の緊張感を迎えます。

まとめ:『良いこと悪いこと』と『20世紀少年』の伏線構造を振り返って

両作品に共通するのは、過去と現在を往復する時間構造と、善悪が交錯する人間ドラマの深さです。

秘密基地、アルバム、予言の書といった象徴的なアイテムが登場するたびに、観る者は“過去の罪”と“現在の選択”の意味を問い直されます。

どちらの作品も、単なるサスペンスを超え、人間の記憶と時間の物語として心に残る作品といえるでしょう。

 

 

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